彩華 濁った血の連鎖
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ひとりっ子だった僕に腹違いの妹である彩華が出来たのを知ったのは、建築学部を卒業して少し離れた街で父の友人が開いている建築事務所で修行するため引越しの準備をしている時だった。父親から掛かって来た一本の電話で実家へ呼び出された僕は居間で父親の再婚相手だという同年輩の若い女性に引き合わされた訳だが、その時すでに彼女は母親の体内に宿っていた。
まずは新しい母親候補を引き合わせて息子の反応を見てみるというのが世間一般の手順なんだろうが、自分より早く生まれただけの奴を先輩とか祭り上げて頭を下げさせられるのは我慢ならん…という理由で資産家の叔父に直談判して留学に必用な金を借り、あちらの大学の建築学部を卒業すると有名所の建築事務所に入って、そこで幾つかの権威ある賞を取って十分に箔を付け凱旋将軍のように帰国して建築事務所を開いたように、破天荒な気質の父親にそれを求めるのは土台無理というものだった。
再婚相手として紹介された綾乃さんという女性は25歳と僕よりも年下で、少女のように華奢な体と幼い顔立ちも相まって高校を卒業したばかりの小娘のように見えた。おいおい息子より年下の娘を後妻にするかよ…しかも手回しよく孕ませて…と心の中で毒突きながら曖昧な笑みを浮かべ「そうなの…」と生返事をした僕だったが、彼女の人を和ませる純朴な笑顔とおっとりとした人柄に触れて、こりゃ変わり者の娘であっても親父の財産目当てじゃ無かろうと判断して、グレて様になる歳でも無いなと再婚を祝福することにした。
なにしろ前の年に母親を膵臓ガンで亡くし落ち込んでいる中学生の息子に、大学の建築学科へ進学して自分の事務所を継ぐなら学費を出すが、そうじゃないなら高校を出たら就職するなりして自分で勝手に生きろと人生の選択を迫るような父親だし、手回し良く超音波検診で娘と分かるほどに育った子供まで仕込んでいるのに、他の選択肢があろうはずも無かったし…
「で、やっぱり金にもの言わせて落とした訳?」と僅かばかりの嫌味を込めて聞くと、「おめぇ〜なんかとは男としての魅力ってモノが違うって事よ!」と職人の親方みたいな口調でいつものごとく答えた親父は、新しい嫁との甘い生活に邪魔だから修行が終わっても実家へ帰って来ないで前に住んでいたアパートに引っ越せと、しれっとした顔で当たり前のように付け加えた。
そのアパートというのは実家や建築事務所からも目と鼻の先にある親父が設計した独身者向けの賃貸物件で、代表作として本に掲載されるほどの出来栄えに満足したため施主に交渉して一部屋買い取っていて、大学に合格した翌日に親離れして一人で暮らせと宣告されると有無を言わさず引越し業者の手で一切合財の荷物を送られてしまった僕は、そこから卒業するまで自転車を漕いで通学していたのだった。
しかも約束通り授業料は払ってくれたものの、若い頃は買ってでもしないといけない苦労を優待販売してやるとかのたまって、アパートの光熱費や食費は自分の設計事務所でバイトして稼げと宣告したものだから、かなり珍しい姓から有名な建築家の息子であることに気付いて羨ましがった学友どもは、毎日20kmもの距離をマウンテンバイクを漕いで通学するのが伊達や酔狂ではなく電車賃をケチるためである事を知ったり、学食で最小限の金額で最大限の満腹を得られる取り合わせの研究にいそしんでいる姿を見るにつけ、世の中にはまだ自分達が知らない種類の苦労があることを垣間見せられたのだった。
まぁそれでも、一見さんお断りなお高い美容室や若手デザイナーが開いたアパレルメーカーが競って入居したがるアパートは、まれに僕の部屋に遊びに来る変わり者のお姉ちゃんにパンツを脱がせるのを後押ししてくれたし、お下がりで貰った自転車もクロスカントリーレーサーにトライアスロンレーサーの車輪を移植したというマニアを唸らせる高性能車だったしと、あの変わり者の親父なりに息子へ愛情を注いでくれたようだった。
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三年間の修行を終えて生まれ育った街へ帰ってきた僕は実家へ住めなかっただけじゃ無く、基本的に自宅のアパートで仕事をして一日に何度か歩いて数分と掛からない建築事務所へ打ち合わせに顔を出すことになった。なにしろウチの父親はスタッフを1個中隊余りも抱えるといった仕事のやり方を嫌っていたものだから、受ける仕事も個人の住宅か小規模な公共施設に限って、経理も含めて僅か八人のスタッフと独立した弟子を外注として使うという小規模な陣容で仕事を進めていたものだから、事務所の建物もさほど広い訳では無く、お前の机まで置くと折角ゆったりとスペースを取ったフロアが狭苦しくなると言われたからだった。
街を離れている間に生まれて彩華と名付けられた妹が四歳になった頃、長年経理を取り仕切っていたお局様が体調を崩し「ありゃ熊と戦わせてもいい勝負するね…」と陰口を叩いていたスタッフたちを唖然とさせて何ヶ月か入院する事になり。彼女のことを「姉さん」と呼んでいる部下というか弟子の若い娘だけでは仕事を捌き切れなくなったので、義母の綾乃さんが事務を手伝う羽目になり、平日は幼稚園が終わってから仕事の手伝いを終えた母親が迎えに来るまで幼い妹を僕がアパートで預かる事になった。
彩華は中々に賢い子で、大人しく絵本を読んだり僕の脇でモニターの画面上に図面が書かれて行く様子を興味深そうに黙って見ていたりと手が掛からなかったし、折に触れて「彩華お兄ちゃんのお嫁さんになるの…」というほど僕を好いていたし、これまでも手掛けた物件が無事竣工した後で全員に取らせる数日の休暇や週末の夜に夫婦揃って出かける時に何度も彼女を預かって慣れていたから、二人にとってアパートで一緒に過ごす午後は楽しい一時だった。
そういった幼い妹との平穏な時間が終わりを告げる切欠となったのは、彼女の「お兄ちゃん…お願いしていい?」という一言だった。その日父親夫婦は彩華を僕に預けて数日間の小旅行に出掛けたのだが、昼食を済ませてお昼寝をさせようとすると、いつも抱いて寝るクマの縫い包みを忘れてきた事に気付いた妹は躊躇いがちにそう切り出すと、自宅へ取りに連れて行ってくれるよう頼んだのだ。
実家の子供部屋入っても心当たりの場所に縫い包みは見当たらず、「クマさんどこいったのかなぁ…」と悲しげに呟いた彩華が申し訳無さそうな顔で僕を見たので、「お兄ちゃんは構わないからゆっくり探せばいいよ…」と言って気を使わせないよう子供部屋を出ることにした。
実際、結婚して家庭を構えた友人宅へは先方の都合をおもんばかって足が向き難くなるように、この三年間というもの応接間より奥へ足を踏み入れたことの無かった僕は、自分が使っていた部屋が彩華の子供部屋になったように実家がどう変わったか興味があって、どこへ行くとも無く家の中をブラブラと歩き回った。
その僕の目を引いたのは一階の奥にある頑丈な鉄製の防音ドアだった。その部屋は父親が音楽を聞きながらインスピレーションを得るために篭る防音構造の部屋で、仕事の邪魔になるからと昔から両親に入る事を禁じられていた僕が、「そういやこのドア何時も鍵が掛かっていたなぁ…」と呟きながら何気なくノブを捻ると、一度も入った事の無い部屋のドアは静かに開いた。
鍵を掛け忘れるなんてあの親父にしちゃ珍しいなぁ…まぁ流石に歳だから…と思いながら中へ入ると、そこは新しい物好きの父らしい最新型のデジタルアンプやDVDレコーダーが納まったオーディオラックと大型の液晶TVそれにカウチソファーがあるだけの、壁面が不要な残響音を抑えるため作り付けの本棚になった六畳ほどの部屋で、入った時から僕はその場所に妙な違和感を感じていた。ほんの少しだがその部屋は不自然に狭いのだ。どうやら見えない小さな空間が有るのは確実だったが、それは建物の構造に自然と感心が向く建築関係者でなければ気付かないほどに目の錯覚を利用して巧妙に隠されていた。
隠された扉の位置は容易に掴めたものの開くノブを探し出すのに手間取った僕が、何とかそれを開けて内側にあった電灯のスイッチを押すと、そこには地下へと下って行く階段が現れた。やっぱり地下室があったか…と納得しながら下りた階段の先にあった部屋はコンクリート打ち放しで控えめに見積もっても20畳近い広さがあり、3メートル近い高さの天井にはパイプが格子状に組まれ何台もの滑車やチェーンブロックが吊り下がっていて、さらに壁際には太い角材で組まれた頑丈そうな椅子が床に固定され、手足を拘束するように取り付けられた革のベルトや座面から突き出した男根のような金属の電極から延びる電気コードの端は傍らの台に置かれた変圧トランスらしい箱の端子にネジ止めされていた。
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自宅の地下に拷問部屋か…こりゃ痛いねぇ息子を部屋に入らせたがらない訳だ…と心の中で呟いた僕だったが、本当に痛い物は部屋の右隅にある小さなドアの向こうの小部屋にあったのだった。天井がやや低いその部屋は鉄格子で二つに区切られ、左奥は壁から鎖で吊るされた折り畳みベッドと洋式の水洗便器だけがあるアメリカの留置所のような監禁部屋に、右側の壁は作り付けの収納棚になっていて、ガラス戸の向こうに何やら拷問に使うらしき怪しい器具が整然と並べられて、僕と腹違いの幼い妹の関係を根本から変えてしまったアルバムはその棚に眠っていた。
厚い強化ガラスの扉が天井まで並んでガラスの壁の様に見える棚の中に一つだけ設けられたヘアライン仕上げのステンレス扉に目が行った僕は、そのノブを試しに捻ってみた。その下には鍵穴が有ったが流石に施錠する必要は無いのか扉は静かに開き、その中にはしっかりした装丁の写真アルバ十数冊に加え、VHSからDVまで様々な種類のビデオテープやDVD果ては銀色の映画フィルム缶まで新旧のメディアが多数納められていた。
そのアルバムの一冊を手に取り最初のページを開いてみると、そこに一枚だけ貼られていたのは大判の記念写真だった。もちろん七五三の晴れ姿とかの微笑ましい物じゃ無く、それは二十代前半とおぼしき二人の若い女が針金でボンレスハムのように縛り上げられ、大きく脚を開いて仲良く並び逆さに吊るされている光景で、彼女らのボールのように変形するまで根元を針金で縊られ赤紫に変色した乳房には数十本の太い注射針が深く突き刺さり、黒く太い栓が突き刺さった肛門から大量の浣腸液でも注ぎ込まれたのか、その下腹は妊婦のように膨れ上がっていたが、そんな仕打ちを受けている二人の顔には悦楽に酔いしれて陶酔し切った表情が浮かんでいた。
これはもしや?…という嫌な予感に駆り立てられて写真の下へ忘備録の意味で書き込まれたらしい文章に目を通すと、そこには芳乃と雪乃という二つの名前があった。芳乃は今は亡き僕の母の名前で、雪乃と言う女性は顔立ちがそっくりな所からして、母の結婚と前後して家を出て未だに行方が知れないと聞いている母の妹に違いなかった。
口の中が異様に乾いて行くのを感じながら更にアルバムのページをめくると、そこには二人が責められる過程を連続して撮影した数枚の写真が整然と貼られ、それぞれの下には詳細な説明が書き込まれていた。
一枚目の写真では針金で縛り上げられ床に転がされた母達は、回りを取り囲んで見守る同年輩とやや年嵩の数人の男達と同年輩かまだ若いかもしれない小柄な女と談笑しながら、うちの父親の手で両足首を天井から鎖で吊り下げられた鉄パイプの両端に取り付けられた足枷で拘束されていた。
二枚目の写真になると二人は肩口が僅かに地面から離れるほどの高さに吊り上げられ、両脚の間に点滴に使うような四千CCと印字された透明のバッグを吊り下げられて、袋の底から垂れ下がったチューブが肛門にねじ込まれた太いゴムの栓に接続されて、体内に流れ込む液体(説明書きによると高濃度のクエン酸溶液だそうだ…)で白い下腹はふっくらと突き出し初めていた。
そして三枚目になると液体は全て注ぎ込まれてバッグは取り去られ、さらに高く吊り上げられた二人のボールのように縊られた乳房には周囲から何本もの手が伸びて注射針を突き刺し、さらに次の写真では周囲に鋭いスパイクがビッシリと突き出した金属の張り型が二人の膣にねじ込まれ、バッテリーが上がった車を始動するのに使うような両端に鰐口クリップが付いた太いコードで連結された。さらに次の写真で二人は左右の乳房を太い金串で水平に貫かれ、輪になった串の根元にはそれぞれ赤いコードと黒いコードの先端に付いた鰐口クリップが挟み込まれていた。
次の写真からはそのコードから二人の体に電流が流され、写真の下に書き込まれた電圧が五十ボルトから徐々に上がってゆくのに比例して、彼女達の大きく口を開けて絶叫し不自由な体を痙攣させる様は激しい物となり、百五十ボルトと添え書きされた写真で二人はついに白目を剥いて失神していた。
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アルバムのページをめくる手を止めふと我に帰った僕は、彩華を部屋に置いてきてから随分と時間が経ってしまっている事に気付いた。そして不安になった彼女が僕の姿を求めて家の中をさ迷い歩き、上の防音室へ入り込んで隠し扉から出てくる所を見られてはマズイと考えた僕は、後ろ髪を惹かれる思いでアルバムを戸棚に戻すと、気配をうかがって誰も居ないことを確認し地下室を出て子供部屋へと向かった。
部屋に入ると彩華は僕がいつまで待っても帰って来ない事に不安を覚えて泣き出しやがて疲れて眠くなったのか、ベッドの中でお気に入りの縫い包みを抱いて頬に涙の跡を残し静かな寝息を立てていた。
僕は幼い妹を揺り起こすと兄に置き去りにされた不安感が蘇ったのか泣きそうな顔をして拗ねだした彼女の機嫌を何とか取って一旦アパートに連れて帰り、改めて近所の運動公園へ連れ出すと彼女を疲れさせるために日が暮れるまで相手をして遊んであげた。その帰り道に寄ったファミリーレストランで夕食を取ると、歓声をあげて楽しそうに遊び回っていた彩華は狙い通りに睡魔に襲われて「おにいちゃん、おんぶ…」とねだり僕に背負われると気持ち良さそうな寝息を立て始めた。
家に帰ると僕は、むずがる妹をなだめすかしてパジャマに着替えさせ、尿意を催して夜中に起きないようトイレに連れて行くと、ソファーベッドに横たわらせて毛布を掛けた。そして彩華が深い眠りに就くと、幾つかの道具をデイバッグに詰め込みアパートを出て再び実家へと戻った。そして玄関の扉に内側から鍵を掛ると、脱いだ靴をビニール袋に包んでデイバッグに納め、昔の記憶を頼りに手探りで真っ暗な廊下を防音室へと向かった。
そして丈夫な防音ドアを開けて部屋に入り、何か急用が出来て父達が帰ってきたとしても時間が稼げるように内鍵を閉めると、懐中電灯の明かりを頼りに隠し扉を開けて階段と地下室を照らす電灯を点け、その扉を閉めてドア枠との隙間から光が漏れ出さない事を確認すると、階段を下りてアルバムが置いてある小部屋へと向かった。
再びあの戸棚の前に立ってステンレスの扉を開いた僕は、後で正しく納め直せるよう中に納められた物の配置をデジカメで撮影すると、アルバムとDVDディスクを取り出して脇にあった小さな机の上に積み上げた。そしてデイバッグの中から取り出したラップトップコンピューターとUSB接続の外付けハードディスクをその脇に並べて壁のコンセントから電源を取ると、ケースに「No.1」と通し番号が振られているDVDディスクを取り出してドライブにセットした。
ビューワーを使って中身を確認するとディスクの中には動画ファイルとアルバムに貼られた写真のネガからスキャンしたと思しき鮮明なPNG画像ファイル、更にそれをアルバムのように表示するために組まれたHTMLファイルが納められていて、どうやらこのDVDはこれまでに撮影された写真や映像をまとめて保存するという意図で焼かれた物らしかった。
「なるほどこのDVDさえコピーしてしまえばこの戸棚に納められた写真や画像の全てを持ち出せる訳か…」と呟いた僕はハードディスクへのコピー作業を開始すると、それが終わるまでの時間を潰す為にアルバムを一冊手に取り床に座って1ページずつ目を通して行った。
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写真に添えられた文章から推測すると、二人揃って真性のマゾヒストだった母たち姉妹は、あの写真で乳房に注射針を刺していた父達サディストの集団と何だかの縁で巡り合い、実家の地下にある秘密の部屋や別のもっと広い似たような部屋で定期的に拷問も同然の責めを受けて、その歪んだ欲望を満たして貰うようになったらしい。
そして姉の芳乃は僕の父親の妻となり、妹の雪乃は失踪して例の鉄格子で閉ざされた部屋で暮らす事になったわけだが、逆さに吊るされて縁がギザギザに尖った金属の輪を鎖のように連ねた鞭で全身が血塗れになるまで打たれている写真のようにハードな拷問を受けているのが主に妹の方であることや、姉妹が鉄格子を挟んで向き合ってお互いの体に残った蚯蚓腫れを指差しながら何事か楽しそうに談笑している写真からして、それは母より伯母の方が遙かに病的なマゾヒストであって、彼女は一歩間違えれば死に至るような激しい責めを受けるために自らの意思で姿を消して檻の中で飼われる人生を選択したからであるようだった。
二冊目のアルバムには、すでに安定期になのか腹がかなり膨らんだ妊娠中の母親と妹が、井戸から水を汲み上げる釣瓶のように仲良く背中合わせに滑車に掛かったロープの両端へ逆さ吊りにされ、水を湛えた大きな桶へ交互に沈められて水責めにされているのから始まって、分娩台に拘束され僕を産み落としている写真までが貼られていて、その時に腹の中へ納まっていた当人としてみれば正直な所しんどい内容だった。
特に堪えたのは出産にまつわる一連の写真だった。父親たちの仲間には開業している医者が居るのか写真に写っている部屋は産科の分娩室らしき場所だったが、そこには分娩台というより拷問台と呼んだほうが適切な革の拘束ベルトを幾つも備えた医療器具が二台並んで据え付けられているように何か曰くがある病院のようで、母親と叔母はその台に全裸で拘束され、その回りを男女の医師と首に赤い革の首輪を嵌められた二人の看護婦に加え一冊目のアルバムに登場していた面々が明らかに裸体の上へ手術着を直接着込んで取り囲んでいた。
次の写真では母親の肛門に太いゴムの栓が押し込まれ、その底には分娩台の脇に置かれた点滴用のスタンドの両側に突き出した腕にそれぞれ吊るされた、氷塊が浮べられ水滴で曇ったガラスのイルリガートル瓶から伸びる赤いゴム管が接続され、身を切るように冷たいであろう浣腸液が体内に注ぎ込まれていた。
続いて潤滑材でヌラヌラと光る肘まで覆ったゴムの手袋を片腕に嵌め、手の平に楕円形の分厚そうなゴムで作られたバルーンが握られた女医の腕が、隣りに横たわった叔母の股間に迫り、次の写真では彼女の膣に手首まで埋まった腕は更に肘の近くまで彼女の体内へと埋め込まれ、たぶん子宮の中へバルーンを残して引き抜かれた。
次のカットでは顔を半ば覆うように呼吸を補助するマスクを掛けられた叔母は、膣から垂れ下がったゴムチューブの端に自転車の空気入れを取り付けられ、その取っ手を乳房に針を刺していた小柄な女が握って彼女の体内に埋め込まれたバルーンに空気を送り込んでいた。
再び被写体が母親に戻ると冷水を体内に注ぎ込まれ凄まじい陣痛に襲われているらしい彼女は表情を歪めながら父親の仲間に犯されていて、その脇では二人の男が床に跪いた看護婦たちにフェラチオをさせながら輪姦する順番を待っていた。
更に次の写真で母親は産気付いたのか、膣に注ぎ込まれ何人もの男のペニスで掻き回されて泡立った大量の精液を股間に垂らしながら大きく口を開いて絶叫し、その傍らでは子宮に押し込まれたバルーンが体内で膨れ上がって腹が姉に負けないほどの大きさになった叔母が、顔を凄まじく歪めて白目を剥き股間から失禁した小便を噴水のように吹き上げ、小山のように天を指して盛り上がった腹の真ん中でヘソは内側の皮膚が裂けてサーモンピンクの肉を曝け出し流血していた。
母親の股間から精液と羊水と血が混じったピンク色の液体にまみれた赤ん坊の頭が顔を出した次のショットになると、叔母の腹の中に空気を送り込んでいた女性は、体内のバルーンから伸びるチューブを手の平に何重にも巻きつけ分娩台に片足を掛けると、胎児並みに膨れ上がったゴム袋をそのまま引きずり出す準備を整えていた。
それに続く写真では母親は無事に僕を産み落としていたが、叔母の股間から半分近く顔を見せたバルーンには、それを引きずり出した女の片足が掛けられ、次のショットでは彼女の足はくるぶしまで膣の中に飲み込まれてゴム袋は体内へと押し戻されていた。
そして最後の写真ではヌラヌラと妖しく光る黒いゴムのバルーンは体内から引き抜かれて床に転がり、ポッカリと口を開いたままになった膣からは血が床に垂れていたが、相当に膣を拡張する訓練を受けていたのか、裂けて肛門とつながり一つの大穴になるようなことは無く、呼吸を補助するマスクを外され口から泡を吐いて悶絶している叔母の腕には何やら注射が打たれていた。
自分が精液まみれになって生まれてきたという出生の秘密は相当に気分をゲンナリと落ち込ませ、「まったく人生という奴は苦難に満ちている物だねぇ…」と呟いた僕は次のアルバムを手に取る気力が中々湧かなかったが、ようやく手にした次の一冊はそんな感傷など吹き飛ばすような破壊力を秘めていた。

・・・・・・つづく